2026年10月23日、総務省消防庁から「作業中の防火管理に対する注意喚起について」が発出されました。
熊本県内の工場において、溶断作業中にFRP製の工作物が炎上する火災が発生したことを受け、消防庁が全国の消防本部などに対し、工事関係者や建物関係者への注意喚起を求めたものです。
今回の通知は、消防設備の設置基準や点検基準を変更する法令改正ではありません。しかし、消防設備工事を含む建物の改修工事では、金属配管や支持金物の切断、溶接、グラインダーによる研磨など、火花や高温を発生させる作業があります。
工事業者だけでなく、建物の所有者、管理者、防火管理者にとっても確認しておきたい重要な内容です。
2026年10月23日に発出された消防庁通知の内容
消防庁の通知では、熊本県内の工場で発生した火災を踏まえ、火災予防条例(例)第28条に基づく「作業中の防火管理」を徹底するよう求めています。
火災予防条例(例)第28条では、次のような作業が対象として挙げられています。
- ガスまたは電気による溶接作業
- 自動車などの解体に伴う溶断作業
- グラインダーなどによる火花を発生させる作業
- トーチランプなどによる加熱作業
- アスファルトなどの溶解作業
- 鋲打ち作業
これらの作業は、可燃性物品の近くで行わないことが原則です。
作業を行う場合には、火花の飛散や炎の接触による火災を防ぐため、可燃物の除去、散水、不燃材料による遮熱、作業後の点検など、必要な火災予防措置を講じなければなりません。
消防設備工事でも火気作業による火災に注意が必要

消防設備工事では、配線や機器の取り付けだけでなく、次のような作業を行う場合があります。
- 消火配管や支持金物の切断
- 配管や架台の溶接
- グラインダーによる金属加工
- アンカーや取付金物の加工
- 既設設備の撤去・解体
- 機械室や工場内での改修作業
火花は作業場所のすぐ近くだけに落ちるとは限りません。床や壁の隙間、配管貫通部、設備の裏側などに入り込み、作業終了後しばらくしてから火災になる可能性があります。
特に注意が必要なのが、FRP、発泡ウレタン、断熱材、樹脂製品、木材、段ボール、油が付着したウエスなどがある場所です。
見た目では火が消えているように見えても、内部でくすぶっていることがあります。
火気作業前に確認したい項目

溶接・溶断・グラインダー作業を始める前には、少なくとも次の点を確認する必要があります。
周囲の可燃物を確認する
作業場所だけでなく、火花が飛ぶ可能性のある方向や下階、壁の反対側、床下、天井裏まで確認します。
移動できる可燃物は作業場所から撤去し、移動できないものについては不燃シートなどで適切に保護します。
消火用具を準備する
作業場所の近くに、対象物に適した消火器や水などを準備します。
建物に設置されている法定の消火器があっても、工事場所から離れている場合があります。火気作業用として、すぐ使用できる場所に消火用具を用意することが重要です。
火花の飛散を防止する
不燃シートや遮熱板などを使用し、火花、溶融金属、切断片が周囲に飛散しないようにします。
ただし、養生を設置しただけで安全になるわけではありません。隙間や養生範囲の外へ火花が飛んでいないか、作業中も継続して確認する必要があります。
作業者以外の監視体制を検討する
作業者は切断箇所や工具の操作に集中するため、周囲の異変を発見できないことがあります。
火災リスクが高い場所では、作業者とは別に周囲を確認する監視員や安全管理担当者を配置することが有効です。
作業終了後にも点検する

火気作業の終了直後だけでなく、一定時間経過後にも作業場所とその周辺を確認します。
床や壁の隙間、配管貫通部、養生の裏側、天井裏など、火花が入り込む可能性のある場所を重点的に点検します。
工場・倉庫・機械室では特に慎重な確認を
工場や倉庫では、建物内に原材料、樹脂製品、油類、粉じん、梱包材などが存在する場合があります。
また、機械や棚の裏側など、火花が入り込んでも目視しにくい場所が多くあります。
消防設備工事で配管や支持金物を加工する場合も、作業場所周辺の状況を事前に確認し、必要に応じて建物管理者と作業方法や安全対策を打ち合わせることが重要です。
現場の条件によっては、火を使用しない切断方法への変更、加工済み部材の使用、作業場所の変更なども検討します。
見積り段階から防火対策を考慮することが重要
火気作業の安全対策には、養生材、消火用具、監視員、作業後の確認時間などが必要になります。
これらを見積りに含めず、現場で初めて対応しようとすると、人員や資材が不足する可能性があります。
特に既設工場や稼働中の施設では、現場調査の段階で次の事項を確認しておくことが大切です。
- 火気作業が必要か
- 周辺に可燃物があるか
- 火花が下階や壁内へ入る可能性があるか
- 建物側の火気使用ルールがあるか
- 監視員や立会者が必要か
- 消防署への届出や事前相談が必要か
- 作業時間や作業後の確認時間に制限があるか
現場を確認せずに価格だけを決めると、必要な安全対策が見積りから漏れるおそれがあります。
今回の通知による消防設備の技術基準変更はありません
今回の通知は、作業中の防火管理について注意を促すものであり、次の消防用設備等の設置基準や点検基準が変更されたわけではありません。
- スプリンクラー設備
- 自動火災報知設備
- 連結送水管
- 屋内消火栓設備
- 泡消火設備
- 不活性ガス消火設備
- 誘導灯
- 非常用照明
ただし、これらの設備を新設・更新・改修する工事で火気作業を行う場合には、今回の注意喚起を踏まえた施工管理が必要です。
また、火災予防条例の具体的な規定や届出の取扱いは自治体によって異なる場合があります。実際の工事では、現場所在地を管轄する消防署や自治体の条例を確認してください。
消防設備工事は設備の性能と施工中の安全管理が重要です
消防設備は、火災が発生した際に人命や建物を守るための設備です。しかし、その消防設備を設置・改修する工事が火災の原因になってしまっては意味がありません。
設備が完成した後の性能だけでなく、施工中の火災予防、周辺への養生、消火用具の準備、作業後の確認まで含めて工事を計画する必要があります。
消防設備工事PROでは、建物の用途、既設設備、施工環境を確認したうえで、消防設備の新設・更新・改修工事をご提案しています。
名古屋市および愛知県内で消防設備工事をご検討の建物所有者様、管理会社様、工場・倉庫のご担当者様は、お気軽にご相談ください。
参考資料
総務省消防庁
「作業中の防火管理に対する注意喚起について(消防予第467号・2026年10月23日)」
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/261023_yobou_467.pdf
総務省消防庁
「火災予防条例(例)」
https://www.fdma.go.jp/laws/laws/items/20260101_joureirei.pdf

