火災通報装置の設置基準とは?必要になる建物・用途・電話回線の注意点をわかりやすく解説
建物を新築・改装・用途変更する際、消防署から「火災通報装置が必要です」と指導されることがあります。
火災通報装置は、火災を建物内に知らせる自動火災報知設備とは違い、消防機関へ119番通報を行うための設備です。
特に、病院、福祉施設、ホテル、旅館、民泊、工場、店舗、飲食店、共同住宅などでは、建物の用途や延べ面積によって火災通報装置の設置義務が発生する場合があります。
また近年では、火災通報装置に接続する電話回線の選定も非常に重要になっています。従来はアナログ電話回線に接続することが一般的でしたが、NTT東日本・NTT西日本は、メタル設備を利用した加入電話について、2035年頃までに光回線・モバイル回線を用いたサービスへ段階的に移行する方針を案内しています。(〖公式〗NTT東日本|個人のお客さま)
そのため、今後、火災通報装置を新規設置・更新する場合は、将来の電話回線移行を見据えて、ひかり電話などの利用を検討することが重要です。
この記事では、火災通報装置の設置基準、必要になる建物、電話回線の注意点について、消防設備工事の現場目線でわかりやすく解説します。
火災通報装置とは?
火災通報装置とは、火災が発生した際に、電話回線などを利用して消防機関へ通報するための消防用設備です。
消防法令上は「消防機関へ通報する火災報知設備」と呼ばれます。一般的には「火災通報装置」「火通(かつう)」などと呼ばれることもあります。
火災通報装置は、火災時に手動起動装置を操作したり、自動火災報知設備の作動と連動したりすることで、消防機関へ通報します。
火災通報装置が起動すると、あらかじめ登録された建物名、所在地、電話番号などの情報を音声で消防機関へ伝え、その後、消防機関との通話を行うことができます。
自動火災報知設備との違い
火災通報装置と混同されやすい設備に「自動火災報知設備」があります。
自動火災報知設備は、建物内で火災を感知し、ベルや表示によって建物内の人に火災を知らせる設備です。
一方、火災通報装置は、消防機関へ火災を通報するための設備です。
| 設備名 | 主な役割 |
|---|---|
| 自動火災報知設備 | 建物内で火災を感知し、建物内の人に知らせる |
| 火災通報装置 | 消防機関へ119番通報する |
自動火災報知設備が設置されているからといって、火災通報装置が不要になるわけではありません。
また、火災通報装置があるからといって、自動火災報知設備の代わりになるわけでもありません。
建物の用途や規模によっては、両方の設置が必要になります。
火災通報装置が必要になる主な建物
火災通報装置の設置基準は、消防法施行令第23条に定められています。
設置義務の有無は、主に次の要素で判断されます。
- 建物の用途
- 延べ面積
- 病院・福祉施設などの利用形態
- 地下街・準地下街に該当するか
- 複合用途防火対象物かどうか
ここからは、代表的な設置基準を用途別に見ていきます。
面積に関係なく火災通報装置が必要になる建物
次のような建物では、延べ面積に関係なく火災通報装置が必要になる場合があります。
- 一定の病院
- 一定の診療所
- 一定の助産所
- 一定の入所系福祉施設
- 地下街
- 準地下街
特に、病院や福祉施設のように、自力で避難することが難しい方が利用する建物では、火災発生時の初動対応が非常に重要です。
火災の発見や119番通報が遅れると、人命に関わる大きな被害につながる可能性があります。
そのため、一定の医療施設や福祉施設では、建物の面積に関係なく火災通報装置が必要になります。
延べ面積500㎡以上で火災通報装置が必要になる建物
次のような用途では、延べ面積500㎡以上で火災通報装置の設置対象になる場合があります。
- 劇場、映画館、集会場など
- キャバレー、ナイトクラブ、遊技場、カラオケボックスなど
- 物品販売店舗、百貨店など
- ホテル、旅館、宿泊所など
- 一定の診療所、福祉施設、幼稚園、特別支援学校など
- 工場、作業場など
- 重要文化財など
ホテル、旅館、簡易宿所、民泊などの宿泊施設では、就寝中に火災が発生した場合、発見や避難が遅れやすくなります。
また、工場や作業場では、火気・電気設備・機械設備・可燃物などが関係することも多く、火災時の早期通報が重要です。
延べ面積1,000㎡以上で火災通報装置が必要になる建物
次のような用途では、延べ面積1,000㎡以上で火災通報装置の設置対象になる場合があります。
- 飲食店
- 共同住宅
- 学校
- 図書館、博物館、美術館など
- 公衆浴場
- 車両の停車場、船舶・航空機の発着場など
- 神社、寺院、教会など
- 倉庫
- 事務所
- その他これらに類する用途
飲食店や共同住宅、学校、倉庫、事務所などでは、延べ面積1,000㎡以上がひとつの判断基準になります。
ただし、建物の一部に店舗、宿泊施設、福祉施設などが入っている場合は、単純に「事務所だから1,000㎡以上」と判断できないことがあります。
複合用途の建物では、建物全体の用途構成によって消防設備の基準が変わるため、管轄消防署への確認が必要です。
火災通報装置の設置基準の目安
火災通報装置の設置基準を簡単に整理すると、次のようになります。
| 設置基準 | 主な対象用途 |
|---|---|
| 面積に関係なく必要 | 一定の病院、診療所、入所系福祉施設、地下街、準地下街など |
| 延べ面積500㎡以上で必要 | 劇場、集会場、遊技場、物販店舗、ホテル・旅館、工場、重要文化財など |
| 延べ面積1,000㎡以上で必要 | 飲食店、共同住宅、学校、図書館、神社・寺院、倉庫、事務所など |
ただし、これはあくまで代表的な目安です。
実際には、消防法施行令別表第一のどの用途に該当するかによって判断されます。
同じように見える建物でも、消防法上の用途が違えば必要な消防設備も変わります。
火災通報装置に使う電話回線の注意点
火災通報装置は、消防機関へ通報する設備です。
そのため、装置本体だけでなく、どの電話回線に接続するかが非常に重要です。
従来、火災通報装置はアナログ電話回線に接続して使用することが一般的でした。
しかし、現在は固定電話サービスのIP化が進んでおり、火災通報装置をIP電話回線に接続するケースも増えています。
消防庁の通知でも、火災通報装置は平成8年に技術基準が策定された当時、アナログ電話回線への接続を前提としていたものの、その後IP電話回線の普及が進み、誤ってIP電話回線へ接続してしまう事例があったことが説明されています。
IP電話回線は、アナログ電話回線と異なり、回線終端装置やルーター、ONU、ホームゲートウェイなどの通信機器を経由します。
そのため、停電時に通信機器へ電源が供給されないと、火災通報装置が正常に通報できないおそれがあります。
また、火災通報装置の信号を適切に消防機関へ伝送できる部分に接続しなければ、消防機関への通報や折り返し通話に支障が出る可能性があります。
2035年頃までにアナログ回線は段階的に移行予定
NTT東日本・NTT西日本は、メタル設備を利用した加入電話について、利用の減少や設備老朽化を背景に、2035年頃までに光回線・モバイル回線を用いたサービスへ段階的に移行する方針を案内しています。(〖公式〗NTT東日本|個人のお客さま)
そのため、現在はアナログ回線で火災通報装置を設置できる場合であっても、将来的には回線の見直しが必要になる可能性があります。
特に、新規で火災通報装置を設置する場合や、既存の火災通報装置を更新する場合は、将来また回線変更工事が必要にならないよう、最初からひかり電話などの利用を検討することをおすすめします。
消防署からも、「消防署としてひかり電話を強制することはできないが、将来的な回線移行を踏まえ、消防設備士から建物関係者へ説明・通達してほしい」と案内されるケースがあります。
これは、消防署が特定の電話サービスを強制する立場ではない一方で、火災通報装置が将来も確実に機能するよう、消防設備業者から施主・建物管理者へ適切に説明することが重要だからです。
新規設置・更新時はひかり電話等をおすすめします
火災通報装置を新規設置または更新する場合、光回線が利用できるエリアでは、メタル設備を利用した加入電話ではなく、光回線電話またはひかり電話の利用を検討することをおすすめします。
消防庁が公表している2025年の通知でも、NTT東日本・NTT西日本から日本火災報知機工業会などを通じて、光設備が利用できるエリアでは、火災通報装置を新規設置・更改する際、メタル設備を利用した加入電話ではなく、光設備を利用した光回線電話またはひかり電話を使用するよう周知依頼が行われたことが示されています。(防災科学技術研究所)
ただし、ひかり電話を使う場合は、単にインターネット回線があればよいというわけではありません。
火災通報装置に使用する場合は、次の点を確認する必要があります。
- 火災通報装置に対応した通信方式か
- 消防機関への通報が正常に行えるか
- 消防機関からの呼び返しに対応できるか
- 停電時にも必要な時間、通信機器が動作するか
- ONU、ルーター、ホームゲートウェイ等に予備電源を設けているか
- 火災通報装置の接続位置が基準に適合しているか
特に停電対策は重要です。
火災通報装置本体に予備電源があっても、ひかり電話側の通信機器が停電で停止してしまえば、消防機関へ通報できません。
そのため、ひかり電話等を利用する場合は、火災通報装置だけでなく、回線終端装置や通信機器側にもUPSなどの予備電源を設ける必要があります。
添付の消防庁通知でも、IP電話回線に火災通報装置を接続する場合の例として、光配線方式、VDSL方式、LAN配線方式、戸建て等の場合の構成が示されており、回線終端装置や通信機器に予備電源を設ける必要があることが図示されています。
IP電話回線へ接続する場合のポイント
IP電話回線に火災通報装置を接続する場合は、接続箇所にも注意が必要です。
添付の消防庁通知では、アナログ電話回線の場合とIP電話回線の場合の接続箇所が図示されています。
アナログ電話回線の場合は、電話局から屋内へ入ってくる電話回線のうち、電話機やファクシミリ等の通信機器の影響を受けない部分に火災通報装置を接続する必要があります。
一方、IP電話回線の場合は、屋内のIP電話回線のうち、回線終端装置等から電話機・ファクシミリ等までのアナログ信号を伝送する電話回線部分に接続する必要があります。
つまり、IP電話だからどこに接続してもよいわけではありません。
火災通報装置の信号が正しく消防機関へ伝わる部分に接続し、他の通信機器の影響を受けないように施工する必要があります。
また、配線の接続部が振動や衝撃で容易に緩まないように固定することや、接続部に火災通報装置用である旨を表示することも重要です。
UPSなどの予備電源が必要になる
ひかり電話などのIP電話回線を火災通報装置に使用する場合、停電時の対策が必要です。
火災通報装置は、火災時に確実に消防機関へ通報するための設備です。
しかし、火災時には停電が発生することもあります。
アナログ電話回線では電話局側から給電される仕組みでしたが、ひかり電話などではONU、ルーター、ホームゲートウェイ、回線終端装置などの通信機器が建物側の電源で動作します。
そのため、停電時にも通信機器が動作し続けるよう、UPSなどの予備電源を設ける必要があります。
添付資料のUPS容量確認方法では、負荷容量の合計を確認し、UPSの定格容量が負荷容量に余裕率を掛けた値を上回るように選定すること、また原則として70分以上の停電補償時間を有するUPSを選定することが示されています。
火災通報装置をひかり電話で使用する場合は、火災通報装置本体だけでなく、通信機器を含めたシステム全体で停電時に通報できるかを確認することが大切です。
「固定電話があるから大丈夫」とは限らない
火災通報装置については、「固定電話があるから大丈夫」「電話が使えれば問題ない」と考えられることがあります。
しかし、火災通報装置に使用する電話回線は、一般的な電話利用とは異なります。
消防機関へ確実に通報できること、呼び返しを受けられること、停電時にも機能を維持できることが求められます。
また、050番号から始まるIP電話回線の中には、消防機関が通報者の位置情報を取得できないものがあります。添付の消防庁通知でも、火災通報装置の機能に支障を生ずるおそれのない電話回線について、アナログ電話回線のほか、050から始まる番号を有するIP電話回線のうち、消防機関において通報者の位置情報を取得できないもの以外のIP電話回線が該当すると説明されています。
そのため、火災通報装置に使用する電話回線は、消防設備業者と通信事業者の両方で確認することが重要です。
消防署はひかり電話を強制できないが、消防設備士からの説明が重要
消防署は、特定の通信サービスや通信事業者を強制する立場ではありません。
そのため、「必ずひかり電話にしてください」と消防署が直接強制することは難しい場合があります。
しかし、2035年頃までにメタル設備を利用した加入電話が段階的に移行される予定である以上、これから火災通報装置を新規設置・更新する建物では、将来を見据えた回線選定が重要です。
消防設備士としては、建物の関係者に対して、次のような説明を行う必要があります。
- 従来のアナログ電話回線は将来的に段階移行される予定であること
- 新規設置・更新時は、ひかり電話等を検討した方がよいこと
- ひかり電話を使う場合は、UPSなどの停電対策が必要であること
- 火災通報装置に適した接続方法を確認する必要があること
- 回線契約だけでなく、消防設備として正常に通報できるか確認する必要があること
つまり、火災通報装置の工事では、装置を取り付けるだけでなく、将来の電話回線環境まで含めて提案することが求められます。
火災通報装置の主な構成
火災通報装置は、主に次のような機器で構成されます。
火災通報装置本体
火災通報装置の中心となる機器です。
電話回線などを利用して消防機関へ通報し、あらかじめ登録された所在地や建物名などの情報を音声で伝えます。
手動起動装置
火災を発見した人が、手動で火災通報装置を起動するための押しボタンです。
火災時にすぐ操作できる位置に設置する必要があります。
非常用送受話器
消防機関からの呼び返しや、通報後の通話に使用する機器です。
火災の状況や避難状況などを消防機関へ伝えるために重要です。
自動火災報知設備との連動配線
自動火災報知設備と連動する場合は、受信機から火災通報装置へ信号を送るための配線が必要になります。
既存建物に後から設置する場合は、受信機の位置、配線ルート、電話回線の位置などを確認したうえで施工計画を立てます。
火災通報装置の工事で注意すべきポイント
1. 用途判定を先に確認する
火災通報装置の要否は、建物の用途によって大きく変わります。
飲食店なのか、物販店舗なのか、宿泊施設なのか、福祉施設なのか、事務所なのかによって、設置基準が異なります。
まずは、消防法施行令別表第一のどの用途に該当するかを確認することが重要です。
2. 延べ面積を確認する
火災通報装置は、延べ面積500㎡以上または1,000㎡以上で設置義務が発生する用途が多くあります。
テナント単体の面積だけでなく、建物全体の延べ面積で判断する場合もあるため、注意が必要です。
3. 電話回線を早めに決める
火災通報装置は、電話回線がなければ消防機関へ通報できません。
内装工事や消防設備工事が終わってから電話回線の問題が発覚すると、開業や使用開始に影響することがあります。
特に、ひかり電話を使用する場合は、光回線の引き込み、ONUやホームゲートウェイの設置場所、UPSの設置場所などを事前に確認しておく必要があります。
4. 自動火災報知設備との連動を確認する
自動火災報知設備と火災通報装置を連動させる場合は、受信機の仕様や移報端子、配線ルートを確認する必要があります。
古い受信機の場合、連動に必要な信号を取り出すために追加部品や受信機更新が必要になることもあります。
5. 消防署への届出・検査を考慮する
火災通報装置は消防用設備です。
設置工事を行う場合は、着工届、設置届、試験結果報告書など、消防署への届出が必要になる場合があります。
また、消防検査が必要になることもあります。
開業日や引渡し日が決まっている場合は、消防署との協議や検査日程も含めて早めに計画することが大切です。
火災通報装置は設置後の点検も必要
火災通報装置は、設置して終わりではありません。
消防用設備として、定期的な点検と報告が必要です。
火災時に通報できなければ、設備としての役割を果たせません。
点検では、装置本体の状態、起動装置、通話機能、予備電源、表示、連動状況などを確認します。
ひかり電話などのIP電話回線を使用している場合は、通信機器の電源、UPSの状態、回線の接続状況も確認することが重要です。
まとめ:火災通報装置は電話回線まで含めて計画しましょう
火災通報装置は、火災発生時に消防機関へ迅速に通報するための消防用設備です。
自動火災報知設備が「建物内に火災を知らせる設備」であるのに対し、火災通報装置は「消防機関へ火災を知らせる設備」です。
火災通報装置の設置義務は、主に次の条件で決まります。
- 建物の用途
- 延べ面積
- 病院・福祉施設・宿泊施設などの利用形態
- 地下街・準地下街に該当するか
- 複合用途防火対象物かどうか
また、今後は電話回線の選定も重要です。
NTT東日本・NTT西日本は、メタル設備を利用した加入電話について、2035年頃までに光回線・モバイル回線を用いたサービスへ段階的に移行する方針を案内しています。(〖公式〗NTT東日本|個人のお客さま)
そのため、火災通報装置を新規設置・更新する場合は、従来のアナログ電話回線だけでなく、ひかり電話等の利用を見据えて計画することをおすすめします。
ただし、ひかり電話を使う場合は、UPSなどの停電対策、接続位置、消防機関への通報確認、呼び返し対応などを確認する必要があります。
消防設備工事PROでは、火災通報装置の設置工事、自動火災報知設備との連動、ひかり電話等への対応、UPSの選定、消防署への相談・届出、消防設備点検まで一括して対応しています。
火災通報装置の設置や更新でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

