泡消火設備の種類
泡消火設備は、水と泡消火薬剤3~6%を混合させ、その泡消火水溶液を泡ヘッドや泡ノズルから放出させる時に空気を取り込み発泡させ、燃焼物を覆い窒息消火と冷却消火により消火します。
泡消火設備のシステム構成は、水源、加圧送水装置、泡タンク貯蔵槽(泡消火薬剤)、泡混合器、放出口から構成されます。
泡消火設備は、設置する防火対象物によって、泡消火薬剤、放出口、更に混合方式にも違いがあります。発泡倍率の違いでも低発泡(発泡倍率20倍以下)と高発泡(発泡倍率80倍以上1,000倍未満)があり、大方のシステムは低発泡です。
泡消火薬剤は大別して3タイプあります。「タンパク泡消火薬剤」は、動物性タンパク質の加水分解物で、発泡倍率は6〜8倍程度です。おもに危険物用の消火薬剤として使用されます。経年変化が速く、保存期間が比較的短い薬剤です。「水成膜泡消火薬剤」は、フッ素系界面活性剤をベースにした泡消火薬剤で、発泡倍率は5〜10倍です。流動性に富み長期間保存が可能です。おもに駐車場などの泡消火設備に使用されています。「合成界面活性剤泡消火薬剤」は、界面活性剤を主成分とする薬剤で、発泡倍率は、高膨張発泡器で放出した場合、80~1,000倍にも達します。
泡混合方式には数方式ありますが、大部分で「プレッシャー・プロポーショナー方式」が採用されています。ポンプから送水した水の一部が泡タンク貯蔵槽に入り、泡消火薬剤を押し出すと同時に、泡タンク貯蔵槽の泡原液の出口の混合器で、ベンチュリー作用により送水している水に指定の混合率で吸入させる方式です。この方法は、泡タンク貯蔵槽が送水の流入で加圧されるので、約1MPaの耐圧性能が必要になります。
「プレッシャー・サイド・プロポーショナー方式」は、泡原液を専用のポンプで送液し、混合器で混合する方式で、「ポンププロポーショナー方式」は、消火ポンプの吸管側より消火用水と一緒に泡原液を吸い込む方式です。この2つの方式では泡タンク貯蔵容器に圧力がかからないために、泡原液量の貯蔵量の多い設備や泡消火薬剤を搭載している化学消防自動車などに採用されています。
泡消火設備には放出方式の違いで、6タイプあります。「泡ヘッド」は天井部などに設置された泡ヘッドより放射される方式で、「移動式泡消火栓」は消火栓方式で泡ノズルより泡を放射する方式です。「エアフォームチャンバー」、「SSI (油面床方式)」は危険物屋外タンクなどへの泡の放射方式です。バースなどに設置する「泡もニター」や「高発泡方式」などがあります。
泡ヘッド方式
泡ヘッド方式は、駐車場に設置されている泡消火設備の方式で、システムの構成は、水源、加圧水装置、ストレーナー、泡消火薬剤貯蔵槽、泡混合器、制御弁、流水検知装置、一斉開放弁、感知ヘッド、泡ヘッド、手動起動装置、非常電源などから構成されます。泡原液貯蔵槽からの2次側の消火配管内には、常時一定の水圧がかかった泡水溶液が充水されています。減圧時に開放する一斉開放弁の2次側に設置されている感知ヘッドが、火災時に先端の合金が溶けて開放され放水減圧することで、該当区画の一斉開放弁が開き、配管内の水圧が減少し、加圧送水装置の近くに設置されている圧力タンクの圧力スイッチが作動し、加圧送水装置が起動します。一方、制御弁にある流水検知装置が流水を検知し、自動火災報知設備受言機などへ泡消火設備が作動している区画の警報を出力します。消火後は、放水区画の制御弁を閉めることで放水が停止されます。
泡の放射区域については、一斉開放弁で分けられますが、駐車場や自動車備工場については、50㎡以上100㎡以下とされ、泡ヘッドは床面積9㎡につき1個以上の個数で配置します。泡ヘッドからの放射量は、薬剤により異なり、一般的な水成膜泡消火薬剤の場合3.7ℓ/分・㎡以上で10分間以上放水できる薬剤量と水源水量が必要となります。尚、危険物施設に設置する泡ヘッド方式は、放射区画が100㎡以上で、放射量は6.58/分・㎡以上となっています。
エアフォームチャンバー方式
エアフォームチャンバー方式は、危険物屋外タンク貯蔵所に設置される方式で、システムの構成は、水源、加圧送水装置、ストレーナー、泡消火薬剤貯蔵槽、泡混合器、バルブヘッダー、ライザストレーナー、エアフォームチャンバー、デフレクター、非常電源などから構成されます。
消火ポンプにより受水槽より水を汲み上げ送水します。泡混合器(プレッシャー・プロポーショナー)を水が通過する時、水の一部が泡原液貯蔵槽に送水されその水圧で泡原液が押し出され混合器の部分で一定の比率で流水と混合され泡水溶液ができます。泡水溶液は配管を通じて流れていき、タンク上部につけられているエアフォームチャンバー内を泡水溶液が通過する時に、ジェット流により外部の空気を吸い入れ激しく攪拌し、空気を核とした大量の泡を発生させます。発泡した消火薬剤は、タンク内部に設けられたテフレクターにあたり、タンク側面に沿って危険物液面に注がれ消火します。